≪祈り≫
「♪ なぜ めぐり逢うのかを
私たちは なにも知らない
いつ めぐり逢うのかを
私たちは いつも知らない ♪♪」
以下、中島みゆき『糸』より
2011年3月11日東日本大震災が起こった。
多くの人はテレビに釘付けとなり、ある人は呆然として、ある人は恐怖に駆られた。
「なぜ?」 「どうして?」と、海に向かっても、答えは無い。
そこにあるのは、そのようにめぐり逢ってしまった現実である。
「♪ なぜ 生きてゆくのかを
迷った日の跡の ささくれ
夢追いかけて走って
転んだ日の跡の ささくれ ♪♪」
何も無いどころか、瓦礫のなかで少女が坐りこんで泣いていた。
「何でこんなことに?」 「どうしたらいいの?」
山に向かっても、答えは無い。
「♪ どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語
縦の糸はあなた 横の糸は私 ♪♪」
けんかばかりしていた兄弟姉妹が、いない。
反発ばかりしていた両親も、いない。
体をぶつけ合って笑った友人も、いない。
「早く出てきて!」 「いつまでも私を一人にしないで!」
空に向かっても、答えは無い。
「♪ こんな糸が なんになるの
心許なくて ふるえていた風の中 ♪♪」
何もない中でも、生きている私。
「私はそれでも生きるの?」 「私は何?」
風に向かっても、答えは無い。
「♪ 縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かを
暖めうるかもしれない ♪♪」
大地震で、大津波で、それまでの[私]がくだけ、這い上がったとき見えた青空。
青空を信じ、太陽を信じ、自分を信じ、明日への<祈り>を抱いて歩みだしたとき、
親・兄弟姉妹・親戚・友人・知人・仲間・見知らぬ人も含めての応援歌が遠くから聞こえる。
糸一本では頼りないけれど、縦糸と横糸で織りなされた布は暖かく、貴重に思える。
問いへの答えは、すぐには来ない。
答えをまさぐりながら歩むプロセスが、答えへと導いてくれる。
縦糸と横糸と、その間に<祈り>を織り込みながら紡がれた布は、赤ちゃんのスワドル【御包み】(おくるみ)のように、柔らかくて繊細な魂(こころ)を優しくしっかりと包む。
2011年4月1日
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[皆既日食]
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。