≪<ヨーガ禅>についての一考≫
日本ヨーガアシラム(現在、日本ヨーガ禅道院)が社団法人となって50年以上が過ぎました。開祖の佐保田鶴治先生(大阪大学名誉教授〈インド哲学〉)に師事して10年、決して長いとは思いませんが、時に先生の著書を紐解いたり、言葉を思い出すことを想うと、師事した10年間以降も、折に触れ、貴重な啓示を頂いている気がします。
最近改めて、<ヨーガ禅>を想うことが増えました。「今さらながら…」の感がありますが、この「今さらながら…」の繰り返し、積み上げが、<ヨーガ禅>を深めることにつながると私は思います。
佐保田先生は、「ヨーガ禅」と命名されましたが、「ヨーガも禅、メディテーション、そこにあえて“禅”をつけるのは、けったいやな」と笑われながらも、「今の世の中、ヨーガと言うと、アクロバットか!と思われることがあり、あえて2重語、意味を重ねる言葉の<ヨーガ禅>を使わないと、ヨーガの真の意味が伝わらない」と、ヨーガに対する世間の誤解を解こうとされました。
佐保田先生の弟子で、私たちの先輩、番場一雄先生の著書『YOGA ヨーガ行法の段階的修練法』に書かれている佐保田先生の≪はしがき≫に、最近の私は着目しています。
ヨーガは最近になって漸く日本の社会に普及し始めました。………
さて、ヨーガはいうまでもなく、インドで発達したものです。………
しかしながら、他面において、ヨーガ行法は世界人類の共通財産であります。………
われわれ日本人にとっても、ヨーガはいつまでも異国からの借りものであってはならないのです。………
それは仏教、特に禅という瞑想法の伝統をもっている…日本人的感覚を生かさなければならないのです。
本書の著者は、…調身法をヨーガの中心に据え、調気法と瞑想法の修習を調身法のなかへいつも還元していこうとする、われわれの主張が本書の中で特色ある仕方で謳われています。
ヨーガのバイブル、『ヨーガ・スートラ』によると、「<ヨーガとは、心のはたらきを止滅すること>で、その具体的な方法として、坐法・調気法・瞑想」が挙げられています。
多くのところでは、この総制(坐法・調気法・瞑想)を別個に単独で行っているようです。しかし、私たちは、佐保田先生が考えられた、4原則@動作をゆっくりA呼吸と動作を合わせるB意識を動作に向けて(次第に内面へ)Cリラックスを守って行うことによって、坐法の中に呼吸法や瞑想を取り入れ、その上で調気(呼吸)法を行い、更に瞑想を行うことにより、心の深い領域からの変容が可能となります。(ヨーガ禅話其の五十《潜在意識に影響を与えるヨーガ》佐保田鶴治著)
このことは、非常に重要と考えます。坐法を切り離すと、単なる体操になりがちで、心の変容は大変難しくなるからです。この意味でも、ついつい慣れがちな普段の実践、修習ですが、意識を<ヨーガ禅>に向けて「調気法と瞑想法の修習を調身法のなかへいつも還元」を、忘れずに行いたいと改めて強く思います。それによって、一人一人の心の深い領域から変容がおこり、それは周囲にも及び、やがては社会へ拡がりを見せると思われるからです。
2025年4月1日

[皆既日食]
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。