≪試練を通して思うこと≫
昨年末、中華人民共和国で起こった新型コロナウイルス肺炎が、日本にも及び、また、海外でも広くはびこり、連日、テレビのトップニュースになっている。当初は、「そんなことが起こったのか」という程度でのんびり見ていたが、2月末、通っているカルチャーセンターからの「感染拡大防止のため、ヨーガ教室(をはじめすべての講座を)休講とします」との連絡に、「そこまでしないといけないのか」とそれまでの自分の認識の甘さに愕然とした。多くの受講生たちも「ショック!」を受けたようである。
本来、ヨーガは心の安定や霊性を高める行法の一つであるが、同時に社会にも開かれるべきと私は考える。
このような状況の中で、休講前は、ヨーガ教室では自律神経を調えたり、腸内フローラ対策をしたりして、特に免疫力を高めるヨーガプログラムを実施した。
また、本格的には耳鼻咽喉科や眼科に行かないといけないが、目・鼻の洗浄も勧めた。ヨーガでも本格的には器具が要るが、流水で洗う事なら手間がかからず、有効である。このようなことを受講生に話したり、休講の受講生にメールを送ったりした。
更に大切なことは、心の安定である。これもヨーガの目指すところであるが、特に昨今は全般に不安定な状況である。勿論、これほどの猛威、不安を持たないことはあり得ないが、不安はあっても不安に引きずられない、パニックにならないことは大切と思う。何よりも過剰な不安は免疫力を下げる。これは本人だけではなく、周囲にとっても大切で、落ち着いた人が一人でもいると、周囲も落ち着きを取り戻しやすくなる。
世間では、うがい・手洗い・マスクを三大予防法としている。もちろんこれは大切であるが、これに加えて免疫力を上げたり、心の安定を促進するヨーガは、さらに積極的な予防法と言えよう。
そうこうしているうちに、カルチャーセンターのヨーガクラスを含め、全クラスが休講になった。受講生の不安を考え、《教室ヨーガ》を自宅で行う《おうちヨーガ》に切り替え、レッスン時間に私は自宅で、受講生もそれぞれできる範囲でご自宅でヨーガをすることにした。
プログラムは、基本を中心に自分で考えたり、ネットヨーガや実践用DVD(どちらもすでに製作、HPからも購入可能)使用。こうした『空間を超えたヨーガ』は、結びつきを強めることで安心する方が多く、思っていた以上に好評でほっとしている。
当初は、休講中の振り替えとして、或いは、感染拡大防止策として行った≪おうちヨーガ≫であるが、続けているうちに、単なる代替ヨーガだけではなく、受講生各自のヨーガに向かう姿勢をより正したり、深める、サットサンガ(志を同じくする人との霊的交流)も強くし、更なる高みへと誘ってくれる効果も期待できそうな気がしている。
今回の状況は、私や受講生にとっては、厳密に言うと、「一つの試練ではある」と思う。そこで、ヨーガから遠ざかるか、(休み中だからと)ほどほどで済ますか、このめったにない時間をめったにできないことで使うかは、一人一人のこれまでのあり方と、現在の受け止め方に関わっているように思う。
私自身も、これまでの人生の中で≪試練≫と呼べるものはいくつかあった。その都度、信頼・尊敬できる方の意見を仰いだり、アドバイスをいただきながら、自らを省み、自分自身の確たるものとの焦点から極力ずれないように内省を心掛けた。具体的には、「私は本当は何をしたいのか?」「私は、もともとどこへ行きたかったのか?」等々。こうした本質的な問いは、普段はなかなかできるものではない。大変な状況の中でこそ、問われ、答えを求める姿勢が起こる。勿論、この種の答えは即答が出るわけではない。しかし、私自身振り返ると、結果的には答えの方向へ導かれる何かがあったように思う。そこには、、直接間接的に佐保田鶴治先生のヨーガがかかわり、これをベースにしながら、ヨーガの道を歩んできたように思う。
試練はその時は大変な状況を伴い、「何でこんな目に!」「どうしてこの私が…」との思いがつきものだが、後になって振り返ると、「それによって得たものは少なくない」と痛感する。今回の猛威による旋風がどのような私に変容させてくれるか、まだまだ予断は許されないが、見つめ続けたいと思う。
一人一人の自己を調えることは、周囲のざわめきを少なくし、微少でも穏やかな社会への道のりを進めてくれるのではないかと、私はヨーガを通して考えている。
2020年3月19日
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[皆既日食]
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。