≪静謐なひと時≫
ヨーガを始めて４０年近くになるというと、多くの方が驚かれる。
今では、「ヨーガを始めた理由？」よりむしろ、「ヨーガを続けた理由？」に関心をもたれる方が多い。
私の場合、一言で言うと「静謐なひと時」となる。
ヨーガを行った後に訪れる静謐なひと時には、何物にも代えがたいよさがある。
私たちが行っているヨーガ（それは世間では『佐保田ヨーガ』といわれるが）、このエッセンスが、ここにはある。
日常生活は、時に、心の状態をかまっていられないことがある。「とにかくこれを！」と、急ぐあまりに気持ちを押し込むことも少なくない。
そのようなディリーストレスは、やり場のない苛立ちや心のへこみを誘い、不安定な心情や体調悪化へとつながることもある。
簡易体操や基本体操といったごくシンプルで易しいものから始め、時に難易度の高いものにもチャレンジすることもあり…、呼吸法や瞑想も少し入れ、といった９０分のレッスンを終え、眼を開けると静かな世界がそこにはある。
幼い頃、雪国で育った私は、ふと静けさを感じて窓辺へ行くと、雪が降っていたことを思い出す。
雪は音を吸収し、生活音さえ優しい沈黙に変える。
私たちは、アーサナ（ヨーガの体操）を、体や内面に意識を集中して行う。これを恩師の佐保田鶴治先生（大阪大学名誉教授、日本ヨーガ禅道友会初代会長）は『ヨーガ禅』として提唱された。座禅などに対して、動くメディテーション、いわば『動禅』と呼んだ。『動禅』は、多くの人にとって入りやすい修行法、易行でもある。これによって、普段の落ち着いた心の状態より深いところから、穏やかさ・あたたかさ・やわらかさなどが満ちてくる。
それは、「シー」と人に言われて強制的に黙るのではなく、緊張して強張った沈黙でもなく、微笑がこぼれるような優しい静けさである。
先ほどまでのとげとげしさや不自由感などがどこかへ行ったような安心・安寧の空間である。このような個人の心の変化は皮膚を通して空間へと拡がり、その場所の空気の変化をもひき起こす。
「静謐」には、個人の心の状態のほかに、世の中の穏やかさ・静けさの意味もある。
個人の心の変化は、周囲へと静けさを拡げ、それがやがて穏やかで安心して暮らせる社会へと拡がることを強く念願し、今後もヨーガを続けたい。
2011年10月1日
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［皆既日食］
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。
