≪温故知新≫
『合掌童女』鹿児島寿蔵
昨年越しの実家の引っ越しを先月終えた。実家を空家にする必要があったので、まず自宅の荷物を最小限にし、次に実家の荷物も最小限にして残りは人にあげたり、バザーに提供、寄付などをして残ったものは処分業者へ。ところが最小限のはずの荷物は運びこむと、何と！自宅は最大限の荷物置き場に変わった。窓から見える景色が最小限になり、一時はどうなることか！と思案に暮れた。
『親の家を片付ける』（通称、親(お)・家(や)・片(かた)、O・YA・KATA、ゆうゆう特別編集、主婦の友社）は、様々な理由で親の家を片付けた人々のドキュメントである。親の世代は80〜90歳代、娘や嫁の世代は50〜60歳代。母と私もこの世代である。親が施設に入ったり、狭いマンションに引っ越す、同居するなどの理由で、娘や嫁は遠距離で片づけに通う。年数で最高は8年、かかった費用で最高は100万円！とべらぼうである。
私の場合は、比較的実家は近く、10数年前から母はヘルパーさんと片づけ始めていたので「少しは楽だろう」と楽観していたが、本格的に取り組み始め、愕然とした！
畳の上の荷物は少ないが、押し入れを開けると、押し入れタンスがビッシリ！その引き出しには物がギッシリ！！ため息をつきながらのスタートであった。
こんな矢先の『親(お)・家(や)・片(かた)』との出会いに、読みながら「そうそう！」「ウン？それもありか」「大変よね」と共感しつつ、時にヘトヘト、時に「なんでこんなに！」と愚痴りながら時間を惜しんで作業を進めた。
膨大な荷物に溺れそうになりながら、「要る」「要らない」「とりあえず、持っていく」と仕分けしているうちに、物は次第に遠い昔へと私を誘う。
古いアルバムには、生まれたころのセピア色の写真、小学生時代の私や弟がおり、成長の跡が読み取れる。何もかも手作り時代の、洋服の切れ端、残り毛糸。絵日記、通信簿などはもちろん、体の弱かった私のために祖母が作った薬用酒・果実酒もキッチンの奥からどんどん出てくる。
料理好きな母は、特に調理器具にもこだわり、様々な用途に備えていた。豆腐を大豆から作り、梅干も作り、一時は玄米食に凝るなど自然で健康的な食事を提供するための器具・用具などがぎっしり並んでいた。
荷物を整理しながら次第に私は、そこで母の呼吸を聞き、「みんなが元気で楽しくいられるように」という思いを聞いた気がする。父は物と一緒には現われないものの、母の背景としての温かい眼差しを感じた。
また、私が子供のころは、母の実家（鰹節の製造販売）の近くに住んでいたこともあり、私にとってファミリーとは「親子4人」だけではない。母方の実家メンバーはもちろんである。隣近所、どこも戸は開けっ放しで、他所の子たちも平気で一緒にお夕飯を食べたり、宿題を教え合うことも多く、近所の大人はよその子も平気で叱るなど、地域全体が大家族を呈していた感があった。
そんなこんなに想いを馳せ、持っていけないものをどんどん選別しながら、気持ちは逆に温かさに満ちてきた。有難さに胸がいっぱいになった。さらには、一昨年末、実家に生けた白梅が未だに蕾をつけ続けていること（奇跡の梅と呼んでいる！）も満ち足りた気持ちにしてくれた。
こうしてこれらの想いは、私自身の拠り所『出自』をより豊かに、より確たるものにしてくれる、と強く実感した1か月であった。
『親(お)・家(や)・片(かた)』によると、片づけで体調を崩し病気になる人や、親子絶縁となる人もいるとか。私がヘトヘトになりながらも物を通して両親の想いや身内の願い、地域のコミュニティの縁を再確認し、今後の私への力強いサポートへと、心の方向を変える事が出来たのは、ヨーガのお陰かもしれない。「体を通して心を変える」佐保田ヨーガが長年の実践によって、深い部分にじんわりと根を拡げてきてくれたことに、ひたひたと押し寄せてくる歓びを満喫している。
2014年1月1日
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［皆既日食］
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。
