京都のヨガ教室 アルジュナヨーガ研修会では主宰の渡辺昧比が佐保田鶴治先生に師事して学んだ『佐保田ヨーガ』をベースに、心身の癒しを深める指導を行っています。

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渡辺昧比

「季節のエッセイ」

アルジュナヨーガ研修会代表、
渡辺昧比の季節のエッセイをお届けします。

≪人間とは……ケアする存在≫

P, ピカソ『ブーケ』

日中には暑さが残っていても、朝夕の空は秋色である。

ついつい過剰反応を起こしそうな猛暑が過ぎると、そこに訪れる涼やかな秋風が懐かしい。
秋はやはり、もの想う季節である。

最近、友人が福祉関係の仕事を始めたことで、高齢の母のいる私は、≪ケア≫について考えるようになった。

「人間とは…」の問いに、先人たちが多くの答えを用意している。
「知性を持つヒト」(ホモ・サピエンスhomo sapiens)に始まり、「工作するヒト」(ホモ・ファーベルhomo faber)、「遊ぶヒト」(ホモ・ルーデンスhomo ludens)などがあるが、今、私の大きな関心事としては、「ケアするヒト」である。

「ホモ・クーランス(ケアするヒト)」homo curans は広井良典氏が提唱した概念である。
「親が子の世話をする」のは動物全般で行われるが、「子が(老いた)親の世話をする」のは人間だけである。
「ケア」とは、狭義では『介護』であるが、広義では『配慮・関心・気遣い』を意味する。
こう考えると人間は、「ケア」し、また、「ケア」される存在である。

親を介護し、また、介護した友人たちは口々に言う。
「母を介護している時は、自分が母の面倒を見ているつもりになっていたが、それはとんでもない間違い。母に見守られていたのは私の方。幸せだったのは、私」
「大変な世話をしているのに、ふっと癒される瞬間がある」
「認知症になって多くのものを忘れ、今の自分の状態も忘れても、母として娘の私を本気で心配してくれる」

私自身は、10年前に亡くなった父との鮮明な思い出が忘れられない。
いつものように入院している父の病室で、主治医の回診を見ていた時のことである。
80歳を超え老衰した父の肉体が目の前にあった。ほとんど崩れ落ちそうな肉の破片の父の体を見たとき、昔見た老女の彫刻を思い出した。老女は体型も一般論としては美しいとは言えない。顔にもシミやしわが刻まれている。
それでも、それだから、強く訴えるものがあり、私は「この彫刻も美しい!」「この彫刻は美しい!!」と感動した。

その時、父の体を見たときも、それに劣らない感動があった。表現はふさわしくないが、「ここから私は生まれた」と、厳粛な生の原点に触れた思いで、「だから私はここにいる!」と感動した。
どこの家庭も問題があるだろうが、若い頃の私は父との関係性が重荷であった。ヤンチャで無鉄砲な私に対し、親ごころであることは承知ではあるが、「良識」「常識」を教え諭す父とは受け入れられない部分があった。父の入院中の介護は、私にとっては父との関係性を修復する絶好のチャンスと思い、できるだけのことはした。
その結果、この感動は父からのラストでビッグな答えであった。十分すぎる『お返し』に私は満ち足りた。

M.メイヤロフのいうように「一人の人格をケアすることは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することを助けるのである。…他の人々をケアすることを通して、他の人々に役立つことによって、ケアするヒトは自身の生の真の意味を生きているのである」のであろう。

とはいうものの、介護に関しての問題も社会政策として山積している。個人レベルでも介護には休みがなく、時には疲労困憊でダウン寸前になったり、重荷でつぶれそうになる時は誰にでもある。がむしゃらに頑張るのではなく、小休止を忘れずに過ごしたい。

『ちょっとお茶する』『ちょっとお月様を見る』『ちょっと散歩する』など一服を入れることが大切である。もちろんヨーガのリラクゼーションや、気持ちのゆとり、他の視点からの眼差しも私には大きな力となっている。

私の場合は、この季節、特に、モーニング・ヨーガが良い。さわやかな秋の空気を全身で吸いながら、緩やかに体を動かすと、忘れかけていたこと、そろそろしないといけないこと、急用ではないが大切なことを、モーニング・ヨーガはそーっと思い出させてくれる。「そろそろ出番ですよ」と、そのまま沈んでしまいかねない深い混沌とした意識の中から、意識化・行動化しやすい領域へと優しく誘導してくれるように感じる。

こうして一服を入れることによって、日常の厳しさを一時的にでも遮断し、非日常の世界の空気を取り入れることができる。とかく見失いがちな自分を取り戻しながら、ケアすること。それによって、ケアされる人、ケアするヒトもともに豊かになれるのであろう。
先ほどの広義・狭義のケアを考えると、ケアされる人、ケアするヒトは入れ替わることもある。ケアする人はまた、ケアされるヒトでもある。

これは今の私の、「道は遠し」の感はあるが大いなる理想である。こう考えると、楽ではないが、自然に微笑みが浮かぶ気がする。

参考文献
『ケアの本質』M,メイヤロフ著、田村真・向野宣之訳 ゆみる出版
『ケアを問いなおす』広井良典著、ちくま新書

2012年10月1日

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