≪『ヨーガ・スートラ』を学び、実践すること≫
私たちのインストラクター勉強会では、数年前からヨーガの代表的な哲学書である『ヨーガ・スートラ』を学んでいます。参考文献として、サンスクリット語の言葉の意味から始め、日本語の解釈本、Uチューブの講義を交えてレジメを作っていますが、特に最近は、日本語の注釈書が膨大な数にのぼっています。それぞれ、「なるほど」「こういう解釈もありかも」と、従来のヨーガ観を拡げてくれる視座に、学ぶことは楽しく、実践に役立つと嬉しく思い、歓迎しています。しかしこのヨーガ哲学も、その実践法によって、大きな違いが出るように思います。
「理論と実践は、車の両輪」と、多くの分野で言われています。実践のない理論は空論になりがちですし、膨大な実践のエッセンスが理論でもあります。この意味でも、ヨーガに関心を持ち、実践している方々がその哲学を重要視するようになったことは、大変素晴らしいことです。
しかし、ヨーガのヨーガたる最も重要なことは、「ヨーガの実践(アーサナ・呼吸法・瞑想など)によって、心の変化を起こすこと」。佐保田鶴治先生の言葉では「心田を耕す」、私の言葉で誤解を恐れずに言うなら、心の深い領域、霊性を≪涵養≫し、本当の自分に≪気づく≫ことです。これを可能にする方法の、私が知っている範囲で最も確実で、多くの人にとっても妥当な方法が、『ヨーガ禅』と考えます。ヨーガの哲学を学びながら、例えば、アーサナ(ヨーガの体操)を動くメディテーション【動禅】として行うことで、この種の≪涵養≫≪気づき≫が可能になると考えます。
『ヨーガ・スートラ』[坐法]を紐解くと、第2章46節「坐り方は、安定した、快適なものでなければならない」に始まり、「安定した、快適な坐り方に成功するには、緊張をゆるめ、心を無辺なるものへ合一させねばならない」すると、結果として、「寒熱、苦楽、毀誉、褒貶の対立状況に悩まされることはない」と、心を騒がせる2極の対立を超える道を示しています。※
こうして体を調えて、心を調える『心の変容』を目指す方法は、東洋では古くから『調身・調息・調心』、【身学道】として仏教その他の修行法として受け継がれてきました。
一方、心の変化を心を使って行う方法は、今もたくさんありますし、手っ取り速い気もします。しかし、心は「コロコロ変わるから、ココロという」と言われるように、一瞬、良いことを考えても、次の瞬間、現実に戻ると、「でもそんなことではやっていけない」と簡単に戻る傾向があります。体を変化させる(調身)ことは簡単ではありませんが、少しつづ体が変化するにつれ、心も少しづつではありますが確実に変化(調心)して戻りにくいといわれています。これは多くの方にとって、歩みやすい『広い道』と考えます。
ざわざわした猛暑が過ぎ、目を外に向けると、様々な問題は未解決のままですが、自分自身の内面を見つめなおし、外側のせいにせず、「わたしがわたしであるためには」「あなたがあなたであるためには」「世界が世界であるためには」、それぞれがそれぞれで、しかもつながっていることを実感しながら、よりよい明日を目指す方法の一つが『ヨーガ』『ヨーガ禅』と考えます。
(※『解説 ヨーガ・スートラ』、佐保田鶴治著、平河出版社)
2022年10月1日
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[皆既日食]
ヨーガの一番の目的は、心が変化することです。自然との一体感や宇宙意識の体験は、その人の内面を深め、その後の人生を豊かにします。