佐保田鶴治先生の、心に響く言葉4
ヨーガをしてカラダが変わると、(沈黙)ココロも変わる
この言葉を、初めて佐保田鶴治先生から聞いた時のカルチャーショックは、大きい。
「何故?」「体のことが、心とどうつながるの?」「でも、それが本当ならすごい!」
この一言で私はヨーガに関心を深め、数年後、佐保田先生に師事した。
ヨーガアシラム(京都・桃山)では当時(1970~1980年頃)、佐保田先生はアーサナの実技指導もされていた。呼吸がとても長く説明も長いので、当時、呼吸が浅くて速い私は息が苦しく、紅潮し、息絶え絶えであった。後でこっそり教えてくれたのは、優しい故山田文子先生であった。「無理に一呼吸でしなくても、いいのよ」救われた思いで、アーサナに励んだ。
その頃、人見知りの激しい私は、知らない人ばかりの内では、どう振舞って良いかわからず、自然にその場を去ることが多かったが、なぜか、ヨーガアシラムでは親切な先輩やおせっかいなほど面倒見のよい同期の人たちが数人いて、食事やお茶に誘ってくれたりして何かと気を使ってもらい、何とか直ぐにやめずにすんだ。
数年してこの場に慣れた頃、何故か来なくなった人たちもいる。本当にありがたかったと、今でも、思う。そういう人たちとは、定期的に会うことは無いが、精神世界のワークなどで会うこともある。感謝の気持ちでいっぱいだが、相手は、「そうかなぁ」とあっさりしている。不思議な気がする。
さて、ヨーガアシラムでは、毎回講義や実技指導の後、佐保田に何かと質問する人が多いが、私はこの言葉「ヨーガをしてカラダが変わると、(沈黙)ココロも変わる」の意味を聞こうとは思わなかった。
私にとっては、カルチャーショックのビッグな言葉なので、大事に抱きしめて味わいながら解いてみようと思ったからである。「ヨーガは理屈ではない」と言う人もいるが、分からないことを自分なりに解くことによって、更にヨーガを深めていくことはできると思う。
結果、現在ではいくつかの説明ができるようになった。
その1.
アーサナを行った後、体が柔らかく緩むと、心も和らぐ。ストレス社会と言われて久しいが、大きなストレスがあれば体は緊張し、心も強張る。このようなときでも、丁寧にヨーガをすれば体の緊張が和らぎ、心の緊張も解ける。
この変化が更に積まれると、一時的な気持ちの変化からやがては人格の変容へと進むと思われる。
その2.
『ルビンの盃』など、ゲシュタルト心理学でも説明できる。『ルビンの盃』では、中央に集中すると見えるのは『盃』のみで、両側に集中すると見えるのは『女性の横顔』で他は背景として消える。
これを応用すると、悩み事などがある場合、ついついそのことばかりを考えてしまうが、堂々巡りで埒が明かず、終には感情的になることもあろう。しかし、例えば、体の一部に集中しながらアーサナをすると、心にある悩みが一時的にしろ背景として消える。
このようなことを繰り返すうちに、私は、「悩みは、その時は大変ではあるが、自分を成長させてくれる大切な応用問題」と思えるようになった。
悩みの解決法は無限にある。力のある人に助けてもらう方法もあるし、逃げ出す方法もある、しかしご縁がありヨーガを続けているのだから、ヨーガ的解決法を探り、実践したいと思う。するとその時は、決して楽では無いが、後で振り返ると今の自分があり、あれだけ苦しんだ悩みにも親しみさえ感じる。
そのような道を、ヨーガを通して、佐保田鶴治先生の言葉を手がかりに、それまで学んだことや身に着けたものを使って解決する応用問題として、これからも歩みたいと思う。